【新規事業の探索例】交通事故防止技術で健康寿命の長い社会を実現! 社会課題解決型事業の創出に向けた技術企画

はじめに:注目高まるサステナビリティ

昨今、気候変動 / コロナ禍 / 戦争など、社会や経済の不確実性が高まり続ける中、中長期的な企業価値向上や投資の観点から、企業経営の本質であるサステナビリティの向上に注目が集まっています。

事業活動においては、社会貢献やSDGs対応といった活動に留まらず、足許の事業戦略や投資判断にサステナビリティの視点をどう織り込んでいくかが問われており、その一つの視点として、自社が取組む事業が「社会課題の解決に資するか」が重要視されています。

アスタミューゼの取り組み

アスタミューゼでは、保有する世界最大級の無形資産可視化データベース(注1)を基に、SDGsに対応した人類が解決すべき「社会課題105」を独自に定義しています。

その上で、企業が解決を図るべき重要な社会課題をマテリアリティスコア(注2)として客観的/定量的に評価すると共に、保有技術を活用した社会課題解決型事業の創出支援を、数多くの企業に対して提供しております。

(注1)193ヵ国 / 39言語に跨るデータを計7.0億件以上保有する世界最大級のデータベース。技術を中心とした無形資産や社会課題 / ニーズが探索できます。

(注2)マテリアリティスコアの概要については、こちらをご確認ください。
https://www.astamuse.co.jp/news/2021/1222/

社会課題:健康寿命の長い社会を実現する

当社が定義する「社会課題105」の中でも特にマテリアリティが高い課題の一つとして、「健康寿命の長い社会を実現する」(SDGs「すべての人に健康と福祉を」に対応)といった課題が挙げられます。

主要な社会課題のマテリアリティスコア(抜粋)

日本国内では、65歳以上の高齢者のうち半数以上が一人暮らしや高齢夫婦同士での生活を営んでいて、日々の生活に必要な家事・買い物などの作業が負担となっていると言われています。

さらに、このうちの約半数は、要介護者を抱える「老々介護」状態と言われており、自分自身と家族の病気に関する問題に直面しています。

介護を必要としない健康寿命は、人生100年時代と言われる、これからの未来に非常に重要な課題となります。

日本の介護費は、2018年度には11兆円を上回るとも言われており、この問題を解決しようと、家事ロボットの開発や介護の肉体的負担を軽減するパワードスーツ、医療サービスを自宅・遠隔で受ける技術などの技術が実用化に向けて開発されています。

政府の財政面はもちろん、高齢者と家族の暮らしやすさが実現するために、医療とテクノロジーによって、高齢者の健康寿命をいかに伸ばしていくか、今後、非常に重要な官民の取組が期待されています。

モビリティ関連技術を用いてフレイル検知サービスを構想

それでは、斯様な課題を解決する上でどのような事業が構想できるのでしょうか。

アスタミューゼでは、社会課題の解決に貢献できる有望技術に対して、企業が保有する技術 / 特許及び同特許の牽制先(注3)の紐づきを可視化することで、技術 / 特許を起点として新たに展開でき得る用途を導出するアプローチを採用しています。特に、異業種異分野を牽制している特許に注目することで、当初想定とは異なる用途での技術活用の可能性を導出することができます。

(注3)特許出願された技術が、先行技術の特許出願により権利化を阻害された特許

ここではあるモビリティ関連技術を用いて社会課題を解決する事業案の例を考えてみたいと思います。例として、トヨタ自動車(株)らが出願している特開2007-301101「車両用不整脈監視装置」に着目してみます。出願内容は「心疾患による交通事故を防止するために、車両運転中でも確実に運転者の不整脈の有無を判定できる装置を提供」するものになります。

この特開2007-301101が牽制した特許出願文献を見出すことで、新規用途を探索していきます。一般に、ある特許公報が牽制した特許出願文献をリストとして確認するのは難しいですが、アスタミューゼは牽制データベースを保有しているため、そのデータベースを参照することで、同特許が牽制した特許出願文献を見出すことが可能です。

データベースを参照した結果、特開2007-301101が牽制した特許出願文献の一つとして、学校法人慶應義塾が出願している特開2018-158010「心拍検出システム、心拍検出方法」を見出すことができました。出願内容は「病院や介護施設等で睡眠中の患者などに対し、ドップラーセンサを用い心拍間隔の検出精度を向上させた心拍検出方法を提供」するものになります。

この牽制関係を得ることで、トヨタ自動車(株)らが有する「運転中の体調急変を予測するシステム」技術を活用し、「フレイル兆候通知サービス」への用途展開を検討できるのではないかという着想が得られました。

この着想に至った背景として、フレイルは加齢とともに運動・認知機能が低下した状態であり、要介護状態に陥りやすいため早期の予防が求められているという社会課題が挙げられます。近年では睡眠障害とフレイル発症との関連が知られており、睡眠状態の把握によりフレイル兆候を検知できる可能性が示されています。

したがって、「運転中の体調急変を予測するシステム」は本来モビリティ関連の技術であるものの、「早期予防を考慮した40代以上のユーザ」を想定顧客とし、「フレイル予防による健康寿命の延伸」を提供価値とすることで、上記の技術を医療・ヘルスケア領域でのソリューションとして転用することが検討可能になります。

上記の着想から一歩進めて事業案を検討したいと思います。もともとは、トヨタ自動車(株)らが出願した「車両用不整脈監視装置」を基点とした用途展開案でしたが、実際にこの技術が活用できうるシーンを浮かべながら案を掘り下げてみたいと思います。

牽制先の特開2018-158010の発明者は慶応義塾大学の大槻知明教授らになりますが、大槻教授らの研究を調べてみると、ドップラーセンサを応用し、電波によって心拍やまばたきを非接触で検出できるアルゴリズムを開発していることが分かります。まばたき検出技術により、まばたきの回数などから、疲労度や眠気などを推定できるようです。

トヨタ自動車(株)らの技術や慶応義塾大学の大槻知明教授らの技術を活用、組み合わせながら、ユーザの疲労度や眠気などの状態を推定することでフレイル兆候を推定することが期待できそうです。実際には、「早期予防を考慮した40代以上のユーザ」が住む家屋にセンサを備えることで、非接触にユーザのまばたきや心拍を精確に検知することでフレイル兆候を通知するサービスを提供できるのではないかと考えられます。家屋内を移動するユーザに対して、まばたきや心拍等の生体データを検知・蓄積していくことで、「リアルタイム健康診断」のサービスも同時に実現できるのではないかと考えられます。また、心拍数などから判定した睡眠状態のビックデータ分析を活用し、フレイル兆候を知らせるサービスを開発していくというシナリオも考えられそうです。

出典:hindawi.com
https://www.hindawi.com/journals/misy/2020/8896252/

さらにくわしい分析は……

アスタミューゼでは、特許に関する牽制データベースを用いて、技術の新規用途の探索が可能です。自社が保有する技術を基点に、牽制データベースを参照することで、自社保有技術を活用した新規事業案創出を支援いたします。また、自社だけでなく、自社がウォッチする競合他社の類似技術も対象に入れて牽制データベースを参照することで、自社が属する業界から異業種異分野への新規参入も検討することが可能になります。お問い合わせはこちらへお願いします。