アスタミューゼ「脱炭素技術40領域」、特許庁GXTIに対応 ~特許だけでは見えてこない脱炭素技術とは~

アスタミューゼ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 永井歩)は、2021年に発表した「脱炭素技術領域40」について、先日(2022年6月23日)に特許庁が公表した「グリーン・トランスフォーメーション技術区分表」 (Green Transformation Technologies Inventory:GXTI)との対比を行いました。その結果をお知らせします。 

特許庁が発表したグリーン・トランスフォーメーション技術区分 

2022年6月23日、特許庁は、温室効果ガスの排出削減にかかわる特許を技術区分ごとに検索できる「グリーン・トランスフォーメーション技術区分表」 (Green Transformation Technologies Inventory:GXTI)を公表しました。 

参考:https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/gxti.html

GXTIを用いた特許情報の分析や気候変動関連情報の開示などの事例を、特許庁が募集します。 

アスタミューゼが発表した40の技術領域 

一方、アスタミューゼでは、脱炭素に対する解決策を以下の3つの方法 

  • エネルギーを効率良く使う 
  • 化石燃料を使わない 
  • 排出炭素を減らす

に分類して、それぞれに紐づく40の技術領域を定義しています。

参考:https://www.astamuse.co.jp/news/2021/211201-decarbonization/ 

この40の技術領域それぞれについて、温室効果ガス削減の「機会」と「リスク」を分析した結果が、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が発行する「2020年度 ESG活動報告書」(2021年8月発行)に掲載されました。 

参考:https://www.gpif.go.jp/esg-stw/esginvestments/gpif.html

特許庁が公表したGXTIとアスタミューゼの定義する40の脱炭素技術領域は、どのような違いがあるのでしょうか。 

GXTI(特許庁)vs 40の脱炭素技術領域(アスタミューゼ) 

40あるアスタミューゼ定義の脱炭素技術領域のうち、33領域がGXTIに含まれています。逆にGXTIの66の小区分のうち、90%近くがアスタミューゼの脱炭素技術領域と重なっています。では、特許庁だけが着目している技術領域、あるいはアスタミューゼだけが着目している技術領域はどこでしょうか?

アスタミューゼが定義・整理する脱炭素技術領域40
  • GXTIにはあるが、40の脱炭素技術領域には含まれない技術領域 
  • 40の脱炭素技術領域にはあるが、GXTIには含まれない技術領域 

を表にまとめました。

GXTIにはある
アスタミューゼにはない
GTXIにはない
アスタミューゼにはある
アンモニアの製造高効率火力発電
アンモニアの貯蔵・輸送パワー半導体
高効率空調スマート交通・MaaS
高効率給湯器エコカー(低燃費車)
高効率モータ・インバータモーダルシフト
プラスチックリサイクル食品製造時の副生成物/廃食品の
活用・フードロス削減
鉄リサイクル培養肉・代替肉・乳代替
アルミリサイクル
銅リサイクル
GXTI(特許庁)と 40の脱炭素技術領域(アスタミューゼ)の相違点

特許庁は、エネルギー効率を上げる技術、リサイクルの技術に注目してピックアップしていることが見て取れます。特許庁は、GXTIの公表に際して、

企業等に開示が求められている気候変動関連情報をエビデンスベースドで説明する際に活用する等、GX技術を特許情報に基づいて分析する際の共通資産になることを期待しています。 

参考:https://www.jpo.go.jp/resources/statistics/gxti.html 

と述べています。つまり、事業者が温室効果ガス排出の低減、カーボンニュートラルを目指した実績を既存の技術によって裏書きすることが、大きな目的の一つといえます。 

一方、アスタミューゼは、カーボンニュートラルの実現に資する技術について、すでに確立されたものだけでなく、

  1. ビジネスの緒についたもの
  2. サイエンスとして認められたばかりのもの
  3. これから技術開発をすすめるもの

を網羅的に含んだ40領域を定義しています。

その中には、特許になりにくいモーダルシフト、スマート交通などの技術領域も含まれます。また、政府機関や国内の事業者からは今後の技術開発の対象として挙げづらい「高効率火力発電」についても、新興国にて社会実装されるとCO2排出を大きく削減できると考え、ひとつの技術領域としてピックアップしました。さらに、農業に起因するメタン排出等を削減するための技術として、農業そのものではない技術(フードロス削減、培養肉等)も解決策の一つとして示しています。

2050年カーボンニュートラルを目指すための技術

アスタミューゼは、世界193ヵ国、39言語、7億件を超える世界最大級の無形資産可視化データベースを所持しています。そこには特許、スタートアップ企業、論文、科研費などの競争的研究資金(グラント)等のデータを収められており、それらに基づき、

  1. まさにビジネスの緒についたもの 
    →スタートアップ企業 
  1. サイエンスとして認められたばかりのもの 
    →論文 
  1. これから技術開発をすすめるもの 
    →グラント 

を分析しています。

既存の技術を総動員しても、「温室効果ガスの排出実質ゼロ」を達成することは困難です。2050年にカーボンニュートラルな社会を実現するためには、これからの伸びを期待できる技術領域のなかで、各事業者・プレイヤーの強みとマッチする脱炭素技術を探し、技術開発と社会実装を進めることが必要だと考え、40の技術領域を選定しています。

一方で、GXTIには含まれる空調・給湯の効率向上、鉄やアルミのリサイクルなどは、2050年カーボンニュートラルに向けた技術として注力すべき分野としては挙げていません。

この技術はどのように役立つのか? 2050年に向けた将来性は?

たとえば、特許庁GXTIに含まれていないが、アスタミューゼの40領域には含まれている「パワー半導体」は、どのように脱炭素に「効く」のでしょうか? 

パワー半導体は電力を制御する半導体です。太陽電池で得られた直流電力を送電網に供給する、送電網から余剰電力を蓄電池に貯める、電気自動車において電池からの出力を制御する、といったプロセスで欠かせないものです。

材料としては、主にシリコンが用いられていますが、SiC系、GaNa系、酸化ガリウム、ダイヤモンドなど、高い電圧に耐え、ロスを減らすための半導体材料の研究開発が進んでいます。

パワー半導体にかかわる技術開発は、高電圧・低損失で再生可能エネルギーを配電し、電気自動車の効率を向上させる、といった効果で脱炭素に寄与するものと見込んでいます。

アスタミューゼは、先に紹介した自社DBを用いた分析により、各々の開発と実装の時期を図1のように予測しています。この予測は、先に紹介した、スタートアップ企業、論文、グラントなどから「パワー半導体」に関わるデータを取り出して、グラント(これから技術開発をすすめるもの)から特許(すでにある技術)までの時間差を推定したものです。

パワー半導体に関わる技術の社会実装時期推定

アスタミューゼでは、40の技術領域すべてについてこのような解説と予測、温室効果ガスの削減率等を示した、「脱炭素俯瞰レポート 2022」を提供しています。

気候変動問題に対する世界的な関心が一層高まる中、自社に関わる二酸化炭素の排出削減という「守りの脱炭素」だけでなく、自社技術を活用したカーボンニュートラルを実現する「攻めの脱炭素」を検討されている事業者様が増えています。アスタミューゼの40の炭素削減技術領域は、有望かつ自社技術との親和性が良い技術領域を見出すための「地図」として貢献できるものです。 

脱炭素レポートについて、ご興味があるかたはぜひお問い合わせください。