未来のGX技術をデータから探索~網羅的かつ公平なエビデンスにもとづく未来シナリオの作成~
空間デザイン・ディスプレイ業界のリーディングカンパニーである株式会社乃村工藝社。ホスピタリティからエンターテインメント、博覧会・サミットのような大型イベントまで、幅広い分野で空間創造事業を展開している。ある大型イベントの受注をきっかけにアスタミューゼとタッグを組み、どのようなシナジーが生まれたのか。クリエイティブ本部 プランニングプロデュースセンター センター長 斎藤雄一氏と同・副センター長 柳原朋子氏に聞いた。
インタビュイー:株式会社乃村工藝社 クリエイティブ本部 プランニングプロデュースセンター
センター長 兼 未来創造研究所 所長 斎藤 雄一 氏
副センター長 兼 企画プロデュース部 部長 柳原 朋子 氏
斎藤氏:1999年、乃村工藝社入社。プランニング職として大手民間企業を中心としたブランドコミュニケーション空間づくりに取り組む。2021年より自社のソーシャルグッド戦略を立ち上げ、2024年よりプランニングプロデュースセンター長と未来創造研究所長を兼務。慶應義塾大学環境情報学部卒。
柳原氏:乃村工藝社に入社後、プランニング職として日本各地の博物館、科学館等公共空間の企画を経験したのち、空間を通じた企業のブランドコミュニケーションの企画、ディレクションを担当。現在はプロジェクトを担当しながら、プランナー所属部門の組織づくり、育成などにも取り組んでいる。広島大学大学院教育学研究科修士課程修了。
“GX技術に関する包括的な探索”という壮大な課題に直面
御社の事業内容をご紹介いただけますか。
斎藤:1892年の創業以来、空間創造を手がけている会社です。商業施設、ホテル、オフィス、博物館・美術館、ショールーム、博覧会・イベントなどの内装・展示の企画、デザイン・設計、制作・施工、運営管理といったディスプレイを主事業とし、グループ全体で年間約15,000件のプロジェクトを手がける空間の総合プロデュース企業です。私と柳原はプランナーとしてプロジェクトのコンセプトワークや調査業務を担当しています。
アスタミューゼにご依頼いただいたきっかけは?
斎藤:数年後に開催される自治体主催のGX関連イベントを当社が受託し、未来にどのような技術を持った企業がどのような街を作り上げているのかという展示の基本構想を作ることになりました。GXは比較的新しい分野でまだ整理分類されておらず、どこにも正解がありません。また、当社もGXの個別技術には関わったことはあるものの今回のように包括的に取り扱うのははじめてで、何もかもが手探りでした。
普段の業務では内部でリサーチを実施することが多いのですが、今回はとても対応できそうにありません。未知のGX技術を体系的に理解し、かつ先進的なプレイヤーを見つけるという壮大な課題を前に、本やインターネットからでは得られない深い情報を得たいと思い、アスタミューゼにリサーチを依頼し、イベント時点において実展示の可能性があるGX技術保有企業をリスト化していただきました。
当初どんな期待を抱いていましたか?
柳原:「100%客観的な情報を集めたい」と思っていました。まだ定義も分類も確定していない分野で企画を作るには客観的なエビデンスが非常に重要です。大学の先生方の意見も重要ですが、どうしても専門分野に偏ってしまい、客観性に欠けてしまう危険性もあります。この点、アスタミューゼならグローバルな情報をフラットに収集し、偏りのない情報を集めてくれるはずだと。この期待にはしっかり応えていただけたと思います。
そもそもどこでアスタミューゼを知りましたか?
斎藤:もともとはインスタでウェビナーの広告を拝見したことがきっかけです。そちらに参加したら永井社長がめちゃくちゃ面白くて(笑)。頭脳明晰で思考回路が理系でロジカル。ウェビナーで「このアジェンダ、MECE(ミーシー)じゃないんですよね」と言うのを聞いて、この人はただものではないなと!最初は社名すら知らず、マニアックなことをやっている会社だなという印象でしたが、話を聞いて腑に落ちることが多く、きっとすごい力を持っていらっしゃるんだろうなと実感しました。
それをきっかけに、当社において「ハッピーテック」をテーマとした新規事業開発のワークショップを開催していただきました。個人的にも大きな学びを得たワークショップで、クリエーターも関係先をうまく巻き込んで自分のポジションを取り、全体を動かしていくパッションが重要だと再確認しました。
データに基づく網羅的かつ公平なエビデンスを提供
GX技術保有企業のリスト化で印象に残っていることはありますか?
柳原:当社の想定を超えた領域からもリストを出していただいて、なるほどと感じました。面白いなと思ったのは冷凍技術です。通常のリサーチではなかなか思いつかない領域なので感心しました。
それから、良い意味でやりとりが密ではなかったことでしょうか。事前にアスタミューゼがお持ちのデータとこちらが期待するアウトプットとをすり合わせ、目線が合った状態でプロジェクトをスタートしたので、細かなやりとりは必要ありませんでした。対象がデータでアウトプットもデータなので要件定義がしやすかったのかもしれません。
一番の成果は何でしたか?
斎藤:大量の専門的な知見を短期間に集められたことです。同じことを自分たちでやろうとしたらおそらく何年かかってもできないでしょう。おかげさまでクライアントにも一発でOKをいただけました。通常、このような案件はさまざまなご指摘(ツッコミ)をいただきますが、網羅的かつ公平なエビデンスを出せているという証だと思います。
もっとこんな情報があったらというご要望はありますか?
柳原:今回は海外のベンチャー情報が中心だったので、国内のベンチャー情報もあればいいですね。もっとも、情報として出てこなかったということは、国内のGXテーマの取組が海外に比べて、まだ活発ではないということかも知れません。
情報のスピーディなスクリーニング力に期待
今後アスタミューゼにどのようなことを期待していますか?
斎藤:正直なところ、アスタミューゼがお持ちの情報は遥か未来を見据えているので、当社の事業にいま直接生かせるかというと難しいと思います。ただ、当社の研究開発部門が新技術を取り入れた空間表現を研究しているので、そちらでデータの活用はできるかもしれません。
個人的には脳科学の観点からアスタミューゼのデータに関心があります。例えば、ラグジュアリーホテルに行ったらなぜ高級感を感じるのか、空間と人間の心理との関係はまだ科学的に解明しきれていないので、そうした分析をデータ活用でできたら面白いと思います。
アスタミューゼは世の中に求められていると感じますか?
斎藤:潜在的にはすごく求められていると思います。例えば、AIは非常に便利ですが、存在を知らなければ使うこともありません。アスタミューゼ側も同じで、アスタミューゼのことを知ればできることがたくさんあるのに、そもそもまだあまり知られていない。知れば、あれもできるこれもできると可能性が大きく広がると思います。
柳原:予感はありますね。企業の研究技術畑の方と話をすると、皆さん向き合うべきテーマを常に探索していて、まめに学会に顔を出したり、社外の人とも積極的にコミュニケーションを取ったり、アナログで地道な努力を続けています。アスタミューゼがお持ちのデータをうまく活用すれば、新たなテーマとの出会いが促進されるのでは?と思います。
アスタミューゼの強みは何だと思いますか?
斎藤:「スピーディなスクリーニング力」だと思います。情報の量もソースも多すぎて、何をどう調べたらよいのかわからない現代社会で、正しい情報を大量に集め、その上できちんとスクリーニングしているという点に大きな価値があると思います。
豊富なグローバル情報がきちんと整頓されていて「こういう情報が欲しい」と言えばすぐに引き出せる。今回のように非常にマニアックな分野の技術情報にもすぐにアクセスできるのはものすごい価値ですよね。これは勝手な想像ですが、めちゃくちゃ頭のいい人がめちゃくちゃ面倒くさくて、めちゃくちゃ地味な作業をしているのではないですか?
そうですね。データベース上の重複するデータを正しく紐づける名寄せという作業をデータエンジニアがコツコツ行ってデータの精度を上げるということをこの10年続けています。
斎藤:そこが他社には真似できないポイントだと思います。それから社長のユニークさも大きな魅力。土日も論文を読むのがルーチンになっているとおっしゃっていましたが、そういうプロフェッショナルな姿勢をとても信頼しています。
最後にひとことアスタミューゼにメッセージをお願いいたします。
斎藤・柳原:いただいた情報をもとに展示を作り上げるのはこれからです。どんな展示、どんな街が実現するか、ぜひ期待していてください。