“サイエンス”דインサイト”プロフェッショナル集団が非財務データを活用して課題を解決
「サイエンスとインサイトで未来を照らす」をミッションに掲げるみずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社。データ利活用アドバイザリーや各種ソリューション、投資運用手法の研究・開発を幅広く手がけている。アスタミューゼにどのような期待をしているのか。執行役員 投資技術開発部長の日尾 泰子氏に聞いた。
インタビュイー:
みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社 執行役員 投資技術開発部長 日尾 泰子 氏
2006年同社に入社し、一貫して株式運用やマルチアセット運用のクオンツ運用戦略の開発に従事。2022年より投資技術開発部長を務める。2004年京都大学大学院理学研究科博士課程修了。博士(理学)。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。
「進化」と「真価」を求めてastamuseを選択
御社の事業内容をご紹介いただけますか。
日尾:みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社は、みずほ銀行と第一生命保険、損害保険ジャパンを親会社とするジョイントベンチャーで、非常に幅広い金融課題に対しテクノロジーを持って解決することを主事業としています。
もとは数理科学をバックグラウンドにデリバティブのプライシングや銀行のリスク計測からスタートした会社ですが、テクノロジーの進歩とともにデータサイエンスを取り入れて業務を拡大し、現在では、事業会社向けのリスク需要モデルやダイナミックプライシング、スマート農業、医療分野など非金融分野にまで業務範囲を広げています。金融バックグラウンドを持つメンバーが多く、修士・博士号の取得者が70%ほど。理系の若手が活躍しているのが当社の特徴です。
私は投資技術開発部の部長としてクオンツ運用のモデル・戦略の開発、グローバル株式モデルやマルチアセット運用のモデル開発と、それを元にした投資助言を行っています。
アスタミューゼに技術資産スコアをご依頼いただいたのは2021年の夏でした。導入のきっかけは?
日尾:以前から特許そのものの非財務価値は意識しており、日本企業のデータを保有していましたが、情報としては非常に薄く、企業の技術の真価を表現できていないのではないかと課題を感じており、ヒアリングを始めたのがきっかけです。
海外のデータベンダー含め他社も検討されたそうですが、アスタミューゼを選んだ決め手は?
日尾:まず、説明が非常に丁寧でした。データを渡して終わりというベンダーが多い中で、アスタミューゼはコンサルティングも手がけているからでしょうか、特許の具体的な活用方法まできちんと寄り添って検討してくれました。
次に、特許が成長領域別に分類されている点に魅力を感じました。IPCなどの特許分類よりもシャープに自分たちが評価したい特許情報の価値を把握できることに非常に価値があると感じました。その結果、非財務データの価値への手応えから研究利用から商用利用への切り替えや、定量化が難しいと言われる「人的資本」に関する分析へのチャレンジ、スピード感や納得感を重視したPoCに活用しました。
導入の最大の成果は?
日尾:日本企業だけでなくグローバルのデータを見られるようになったのが一番大きな成果です。
2021年に導入していただいて、その後2023年12月に商用化に切り替えていただきましたが、その理由は?
日尾:2つあります。1つ目は、非財務データは1つのα(超過収益)の源泉として捉えられるという確信が持てたからです。非財務には財務で捉える企業価値とは異なる価値があるという手応えを感じました。
2つ目は、時代の要請があったからです。非財務データの活用を成長のドライバーとして入れることはファンドの魅力という点で大きな武器になりますし、逆に非財務データの活用なしに今後の成長戦略は考えられないと思いました。商用化に移行した際には、成長ポテンシャルがある中でビジネスとして大きくなる段階を知るために、グラント(競争的研究資金)とベンチャー企業の投資額データの導入もしました。
成長領域に関して、アスタミューゼは網羅的に136領域を設定していますが納得感はありますか?
日尾:そうですね、投資目線で見ると、私たちは投資家が投資という観点で関心を持つテーマを探したいのですが、136領域の間でビジネス実現までの時間スケールの幅は大きいというのは正直感じるところです。一方で、コンサル目線で見たときに、企業が長期的にサステナブルに成長するためには何をすべきかを提案していく上で、アスタミューゼの成長領域データは非常に参考になります。
約3年お付き合いをさせていただいていますが、これまでのやり取りで印象に残っていることはありますか?
日尾:私たちが抱える課題を解決する方法について、何度も繰り返しディスカッションをしたことが強く印象に残っています。現在、従業員エンゲージメントデータのPoCを実施しておりますが、こちらもディスカッションの中でご提案いただいたものです。定量化が非常に難しい分野ではありますが、人的資本の中でエンゲージメントはスコア化できる貴重な領域なので、一つのチャレンジとしてお願いしました。
女性管理職比率や有給消化率、離職率といった公開情報だけでなく、従業員のエンゲージメントデータというインターナルな情報も含めることでより深い分析ができるのではないかと思い、お声がけさせていただきました。
日尾:当社でも人手資本と企業価値との研究は実施してきており、社員スキルアップを図る取組みが株価パフォーマンスに繋がる傾向は把握していたのですが、社員がそれをどの程度評価しているのかも重要ではないかという仮説のもと、エンゲージメントのデータの分析を検討して考えておりました。自分たちで調査し、一社一社ヒアリングするのは手間も時間もかかるので、アスタミューゼがPoCでスピード感を持ってやってくださり、とてもありがたく思っています。
アスタミューゼは御社のご期待に添えましたでしょうか?
日尾:期待していた以上に助けていただけたというのが率直な感想です。非財務データの場合期間や企業カバー率に課題が多く、導入には見切り発車でいかなければいけない部分が多い中で、アスタミューゼは、可能な限りの整備を行い、長期のデータを整備して提出してくださるので非常に信頼しています。
成長領域に関しては時代とともに変化してしまうことを懸念していましたが、アスタミューゼは毎年アップデートしており、最新の内容をペーパーでのアナウンスで済ませるのではなく、しっかりと説明していただけるのは大変有難いです。
「本源的な社会課題解決」につながる非財務データの重要性~アイデア段階からワンチームで課題解決に挑む~
御社が描く成長戦略とアスタミューゼへの期待を教えてください。
日尾:金融で培ったテクノロジーを生かし、企業・社会のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)に貢献していくことを社の新たなビジネス軸の一つに実現していきたいと考えているので、その実現に向けて、アスタミューゼにデータの観点からサポートしていただきたいですね。アスタミューゼのデータクオリティには全幅の信頼をおいておりますので、引き続き質の高いオルタナティブデータのご提供を期待しています。
より大きな期待としては、非財務データの価値について広く世の中に知らしめる存在になっていただきたいと思っています。投資判断において非財務データの重要度は年々上がってきており、今後は財務とどう組み合わせていくかがより重要になってくるのは疑いようがありません。一方投資だけでなくM&Aや企業の与信リスク判断などにおいても非財務データは重要な要素ですが、こちらについてはまだまだ議論の入り口の段階という印象を持っています。
個人的な要望としては、キーパーソンと特許の関係性などが一目でわかるようなビジュアル化をお願いできたら嬉しいですね。また、コンサルタントだけでなく開発者の方ともお話をさせていただくなどして、お互いに「今こういうことを考えています」というアイデアの段階から一緒に考えさせていただけると我々の開発アイデアがより広がるのではないかと思っています。
御社にとってアスタミューゼはどんな存在ですか?
日尾:良い意味で“ベンチャーらしくないベンチャー”です。個々の企業に寄り添って考えてくださいますし、「この方々なら信用していいな」と思わせてくれる、人の顔と心が見える会社です。
さいごに、アスタミューゼにひとことメッセージをお願いいたします。
日尾:はじめにお話した当時は特許のデータベンダーと捉えておりましたが、最近は常に高みを目指し、企業の成長性を非財務面で捉えることに真面目にチャレンジされている会社というイメージに変わりました。アスタミューゼが社会の「ヒト」や「コト」への意識の変革を起こしてくださることを大いに期待しています。